花森さん、しずこさん、 そして暮しの手帖編集部
小榑雅章 著
2016年6月刊
四六変型判/上製/402ページ
ISBN:978-4-7660-0201-0
花森の愛弟子による、はじめての回顧録。
元編集部員で、連続テレビ小説『とと姉ちゃん』の現場指導者の著者は、小誌が100万部近い販売数となり、名企画「商品テスト」などの記事が、暮らしに影響を与えたころに在籍していました。当時の編集長・花森さん(花森安治)は、ドラマでは天才編集者の花山伊佐次、そして社長・しずこさん(大橋鎭子)は、ヒロイン常子のモチーフとなっています。
花森さんの一番の愛弟子として、怒声を浴びながら薫陶を受ける悪戦苦闘の日々。本書は、よく働き、よく叱られ、そして仲間たちと励まし合った、汗と涙の奮闘記です。
目次
まえがき
一章 銀座の暮しの手帖編集部
花森さんの、みんな集まれ
暮しの手帖社に入社
面接試験
銀座本社の暮し
銀座の編集室
銀座の夜と新橋の暮し
編集会議
60年安保改定反対デモと花森さん
日吉ビルの屋上から飛び降りてやるぞ
[コラム]花森さんと鎭子さんのプロフィール
二章 暮しの手帖研究室と日用品のテストの誕生
暮し方の研究
何もない焼け野原から立ち上がる
キッチンの研究 KITCHEN
わたしたちの暮しに なによりも大事な場所
キッチンさがしは鎭子さんの馬力
「暮しの手帖研究室」の活動が始まった
日用品の最初のテスト報告
企業の実名を出して評価する決断
ソックスをテストするまでに
もうだまされない、そのためには事実を見究める研究室が必要だ
三章 なかのひとりはわれにして
〈暮し〉という言葉には、あたたかさ、せつなさがこめられている
いつも読者とともにいる
随筆は高名な先生にお願いする
東久邇成子さんの「やりくりの記」
東久邇成子さんも読者も、同じ「なかのひとり」なのだ
愛読者カードと手帖通信
協力グループの誕生
なぜ協力グループをつくろうと考えたのか
発売部数がどんどん伸びてきた
協力グループが暮しの手帖の発展の源泉
小林一三の宝塚と花森安治の戦略
粗雑な『暮しの手帖』はつくらない
四章 日用品のテストから本格的テストへ
日用品のテスト
本格的テストにはお金がかかる
ベビーカーのテストで100キロを押した
家電三種の神器のテストはできるのか
やはり本格的研究室をつくらなければ
石油ストーブのテスト
石油ストーブを倒してみたら
石油ストーブはブームになった
石油ストーブ水かけ論争勝利の記念日
即席ラーメンのテスト
電気掃除機のテスト 本物のゴミをもとめて
五章 暮しの手帖研究室の暮し
編集部は東麻布の研究室へ引っ越し
研究室 新新館が出来て完成
B室の杉村さんたちの活躍と貢献
女子大卒の新人が続々入社
30才以上の女性編集部員を募集します
予約購読者への発送業務
六章 いろいろな記事の作り方
「ぬかみその漬け方」を担当して
『暮しの手帖』の料理記事のつくりかた
千葉千代吉さん
小島信平さんのおばんざい
常原久彌さんの「一皿のご馳走」
『暮しの手帖』はオモチャ箱
日曜大工の面白さ楽しさ
『暮しの手帖』のファッション 直線裁ちから外国の女性へ
七章 編集部の泣き笑いの日々
母の入院と鎭子さんの尽力、花森さんのお見舞い
松ちゃん先生と写真部
大橋芳子さん
お先に失礼しますと、お先に失礼していいですか
組合をつくろうという相談
給料日に行なわれる誕生会
ボウリング
コンテストいろいろ
クリスマス
大晦日とお年玉
社員旅行は大名旅行
当番制がなぜ始まったのか
電話にはみんな困った
林澄子さん、さようなら
[コラム]思い出すことあれもこれも
八章 「戦争中の暮しの記録」
編集会議で花森さんが言った
別冊でなく定期の号で、入選作全部を発表する決断
九章 1世紀100号から2世紀1号へ
花森さんはなぜ京都へ行ったのか
花森さん、2世紀創刊の精神を語る 都ホテル1969年2月
2世紀の新しい1号をつくろう─新年度に花森さんが呼びかけた
「辞めてやる」10年目の辞表提出
ある日本人の暮し「競明競暮河岸哀歓」
われわれの武器はペンである 花森さんの決意
『暮しの手帖』2世紀52号 そして「早春と青春」
花森さんの食事の献立(1月4日から1月12日)
「人間の手について」花森さん ありがとうございました
あとがき
著者
こぐれ まさあき
1937年、東京都生まれ。早稲田大学第一文学部を卒業した1960年、暮しの手帖社に入社。『暮しの手帖』の創刊者であり、初代編集長の花森安治が永眠するまで、18年間にわたり薫陶を受ける。もうひとりの創業者の大橋鎭子とは、24年間を編集部でともにした。退社後、スーパーマーケットのダイエーに入社。創業者の中内功のもとで働く。取締役秘書室長、流通科学大常務理事兼事務局長、兵庫エフエムラジオ放送(Kiss-FM KOBE)社長、ダイエー消費経済研究所代表取締役会長などを歴任。現在は、企業やNPO等の組織の利他行動の社会心理をリサーチする「向社会性研究所」主任研究員。社会学博士。