戦争中の暮しの記録

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暮しの手帖 編集部 編
1969年8月15日刊
B5判/並製/292ページ
ISBN978-4-7660-0103-7



一冊まるごとを戦争中の暮しの特集にあてた『暮しの手帖』1世紀96号(1968年夏)を保存版にした書籍です。
終戦から22年の歳月が経った1967年、『暮しの手帖』は、戦時下の「庶民の日常の記憶」を集めようと、「戦争中の暮しの記録」の投稿を呼びかけました。高度経済成長に沸く日本において、あの暗く、苦しく、みじめだった戦争の記憶は、もはや思い出したくない、忘れてしまいたい過去のことだったでしょう。ところが、総数1736編という驚くべき数の原稿が寄せられ、当時の編集長の花森安治と編集部員たちは、全身全霊を傾けてこの企画に取り組み、一冊に編み上げました。
市井の人々は、なにを考え、なにを食べ、なにを着て、どんなふうに暮らし、死んでいったか、生きのびたのか。半世紀の時を経て、あの「戦争」を今に伝える、不朽のロングセラーです。


目次

戦場
いろいろの道具/わたしの写した教科書(清水安子)/若き日よふたたびはかえらぬものを/焼跡の卒業式/壕舎にも召集令状は来た/ちまたに雨の降る如く/この日の後に生まれてくる人に

日日の歌(勝矢武男)

配給食品日記(平岡峯太郎)

お願い申します
それでも私は生きる(田上ユイノ)/子供をたのむと一言(石井スエ)/さまざまのおもい(村上せん)

疎開
無理に疎開させた子が疎開先で爆死(柿谷実子)/捨ててあるものを拾ってたべる暮し(渡辺とよ子)/夫の出征中に強制疎開でついに廃業(森井勢以)/疎開荷物を預かるほうにも多い苦労(熊谷さち)/一家離散したまま再び揃うことなく(清沢ひろ子)

東京大空襲
火(島野康子)/死(黒岩保子)/熱(坂本千枝子)/命(谷口ますみ)/家(紀禮子)/隣(坂本千枝子)/傷(松岡婦志)/煙(藤木治子)

わが町は焼けたり
燃えたはずなのに(中杉知誉子)/手を振る敵機(服部秀子)/タンスをお棺に(宮治千枝子)豆粕を押しいただく(神林範)/早よ降参したらええ(小森美恵子)/防空壕に埋まる(佐藤弘子)/くさった握飯(尾関岩二)/運命の給料日(西本恵三子)/逃げる(河原富志恵)おしゃれの効用(高橋君子)/爆弾ともしらず(松田経子)

一九四五年八月六日
黒い雨(村上芳子)/わが子(小久保よう子)/駅から(野村ぬい)/やけど(橋本朝江)/次の朝(星野佳以子)

大阪全滅
こんな所で負けたらあかんと人を押しのけ(勝きみ子)/防空壕の中の物まで灰になってしまって(今田やす)

飢えたるこどもたち
お手玉の大豆(康本君子)/二日間歩いて脱走(上沢美和子)/いなごの青い汁(渡辺玲子)/おやつの食塩(森川玉江)/食べすぎ(山下隆男)/腹下しをかくして(梅野美智子)/絵にかいたお菓子(中村桂子)

おてがみ(大和田一子、今泉タマ)

村へやってきた町の子
食物やって歌わせる(土佐林信江)/先生が子供のぶんまで(藤原徳子)

防空壕と壕舎
トタン小屋(戸田達雄)/屋根のカボチャ(松本栄子)/役に立たぬ防空壕(江間道子)/まるで仙人の暮し(藤木治子)/機銃掃射で助かる(小久保勘市)/女手ひとつで作る(土谷義)/防空壕は断念して(中山筆子)

小学生
きたかぜふいているときにつくつたかんそういも(田中よし子)/のどがかわいてもみずものめないでざいもくはこび(富田美鶴)/ひもじさにひとのべんとうをぬすんでたべたこども(浦田邦子)/こわされたふろやのいろのついたタイルがほしかつた(太田真理子)/きのみをひとつたりまつやにをとつたりしたやまのこ(中川三郎)/ひるはこどもよるはすいへいさんがつかうきようしつ(小関春子)/あのころのこどもはこんなふうにくらしてた(太田芳江)/十五キロもあるとなりむらへひとりでかいだしにゆく(江川佐一)/まいにち四キロのみちをがつこうへはだしでいつた(松本和子)

油と泥にまみれて
飛行場(横山譲二)/軍帽(梶川裕子)/放送(木内勝子)/機関砲(片山アヤ子)/車検(稲田好子)/撃茎(古橋賢造)/航空廠(森崎和江)


海水のおかゆ(戸原照子)/豆ご飯(喜多三重子)/糠の団子(新井オイツ)日の丸弁当(草野知代子)/雑炊食堂(柏木七洋)/ジャガ芋(小久保よう子)/かぼちゃの葉(岩森道子)/ごった煮(内田長三郎)

酒・たばこ・マッチ・石けん・長ぐつ・油
暗い灯(端慶覧長和)/たばこをまく(細矢充栄)/手作りの靴(古川雅子)/あく洗い(高井薫)/やみ酒(小久保勘市)/月下の食事(遠藤風子)/行列の場所とり(内田長三郎)/電柱の利用(神守きよ子)/海ほたる(横田好子)/松の明り(南郷よね子)/雪はだし(味方瞳)

路傍の畑
どぶ板の上にも野菜はそだつ(内田長三郎)/御堂筋の歩道を掘りかえして(守先花子)/三合程の大豆を一斗にせよと(山田千野)

産婆さんは大忙し
ろーそくの火の下で(石井園江)/産湯の燃料にこまる(高木ちよ)

ゆがめられたおしゃれ
佳人薄命(小久保よう子)/千枚通し(笠井幸子)/地下足袋(黒滝正子)/女子挺身隊の記念写真(岩瀬田鶴子)

恥の記憶
紀元節の買出し(内田長三郎)/女生徒の病気(木沢敏子)/先生のピンはね(山下隆男)/疎開地の女ボス(飯森加代子)/白米の弁当(上池達男)/疎開っ子(佐野寛)/乾パンどろぼう(藤原正高)/生めよふやせよ(内藤咲枝)

汽車は行く
宇都宮から大阪へ(山中二郎)/東京から静岡へ(山内祥子)/八幡-千丁間(芝崎総夫)/東京から山形へ(値賀アイ)

いろいろ
薪の塩だし(篠田良一)/血清(中村のぶ子)/千人針(土屋政江)/父の免職(岡井敏)/犬を連れて(池田ゆき子)/取急ぎ結婚(種岡敏子)/つくろい屋(小幡玻矢子)銭湯(原多美江)/女教師の宿直(安土文子)戦死(内田茂子)心の隅にのこる汚点(河原富志恵)/全羅南道光州東公立中学校(白土時雄)/ある教え子の死(小林綾子)/自分だけ白い飯を食べる神経(渡辺秀子)/カラフトのいも作り(山口清子)/東京の下宿(高畠健)/防空演習(柏木七洋)/台湾の嘉義の防空壕(太田光子)/じゃま者あつかい(大山輝子)/竹槍(田島泰子)/ある微用工(吉本元太郎)

父よ夫よ
お通夜の炭(藤岡タヅ)/家の下に(矢島興志子)/駅頭のわかれ(向坂淑子)/君死に給う(久末栄)/いわしの箱(三田庸子)/暮れかけた道(林優子)

百姓日記(田中仁吾)

附録
1 戦争中の暮しの記録を若い世代はどう読んだか/1215名の若い人たちについて
2 戦争を体験した大人から戦争を知らない若い人へ/やっと発言しはじめた戦中派